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がん遺伝子パネル検査について

皆さん、こんにちは!
しゅわです。本日は医療の話(注:私的なまとめです)。


今回は「がんゲノム医療」の重要なツール、
がん遺伝子パネル検査」について、です。

まさに2019年6月から2つの遺伝子パネルが、保険収載されました。
※保険収載とは、健康保険で使える検査として認められ、実際に使える、という意味です。

その2つとは、、、

多数の遺伝子を一度に調べ、治療に活かす試みはこれまでもありましたが、

これだけ大規模に保険診療で導入されるのは初めてです。 (※そのため、いろいろな余波が予想されています)

【注意】

2019/6/3現在の情報をまとめたものです。 この情報を参考にされて、重大な問題が生じても当方では責任を追いかねます。 必ずご自身で主治医とご相談の上、適切な検査と治療をご選択ください。 また、個別の医療相談には応じられませんので、主治医にご相談ください。

原理(どうやって調べているのか)

がん遺伝子パネルと言ってもさまざまなものが世の中にありますが、

基本的には、次世代シーケンサー(第2世代)を用いて、がん組織(+何らかの正常組織)からDNA(とRNA)を抽出して、
読みたい遺伝子のみ選び出して、細かい断片として、大量に配列を読み、コンピュータで情報解析します。

遺伝子異常が見つかれば、その影響をこれまでの報告から類推して、検査結果のレポートとして報告されます。

日本では、多くの場合、患者さんにお返しする前に、
エキスパートパネルと呼ばれる会議(カンファレンス)で内容を検討してから、患者さんに返却(開示)されます。

適応(使える条件とは)

2019年6月時点では、

保険適応のパネル、「FoundationOne」、「NCCオンコパネル」とも

主な適応の条件
  • 難治性・再発の固形がん
  • 一般に手術不能で、化学療法を行っている方が対象
  • 標準治療(一般的に使われる治療)が終了
  • 標準治療が終了見込み、または標準治療が無い場合も検討可能
  • 検査後に化学療法などの治療を行える見込みがある
  • 体調が悪いと受けられない可能性あり
  • 検査への同意
  • 内容を十分に聞いてください。
  • 臨床情報やゲノム情報をC-CAT(脚注1)に登録する
  • 登録の可否を選択可能

…など。

適応の詳細はこちら。
出展:中央社会保険医療協議会 総会(第415回)資料より
中央社会保険医療協議会 総会(第415回) 議事次第
中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)|厚生労働省

FoundationOneのみ、コンパニオン診断機能が付帯します。

コンパニオン診断とは…以下、リンクを参照

一般社団法人 日本臨床検査薬協会 | 臨床検査からわかるトピックス | がんに関する遺伝子検査 | Q1

注意点

検査を受けるには、いくつか条件や懸念事項があります。

  • 検査に使える「がん組織」がある
  • がん組織を使う検査では、がん組織がそのものがないと検査できません。
    (※組織を採取してから数年経っている場合、検査がうまくいかない場合があるようです)
  • 遺伝性のある遺伝子の異常が見つかることがある
    ※血のつながった家族・親族にその影響が及ぶことがあります。
  • 健康保険の検査では、一生に1回しか受けられない
    ※2019年6月段階での条件です
    複数の組織が候補になる場合は、どれか1つを選ぶことになります。
  • がんゲノム医療中核拠点病院・連携病院でのみ検査が受けられる
    病院リスト(2019/4/1現在):https://www.mhlw.go.jp/content/000506314.pdf
    どの病院でも受けられるわけではありません。
    ※コンパニオン診断のみの場合は不要(この場合、調べた遺伝子の結果のみ返却)
  • がんゲノム医療中核拠点病院でのエキスパートパネル(会議・カンファレンス)で検討後に返却される
    ※コンパニオン診断のみの場合は不要(同上)
  • 検査を依頼してから結果(レポートの開示)が得られるまでに時間がかかることがある
    ※2−3ヶ月以上かかることもあるようです。
  • 検査を受けても、有用な情報が得られない可能性がある
  • 検査結果が得られる前に亡くなる場合もある
  • コンパニオン診断機能のみを使用する場合は、目的の遺伝子以外は患者さんに返却されない
  • 見つかった異常に基づく治療を行う場合、遺伝子パネル検査にその遺伝子に対するコンパニオン診断機能がない場合、治療に入る前にコンパニオン診断による確認が必要
  • 遺伝子異常が見つかっても、治療薬が見つからない場合がある
  • 治療薬が見つかっても、投与するには臨床試験や患者申出療養で治療になり、治療までに時間がかかることがある

…など.

他の選択肢

臨床研究(SCRUM-JAPANなど)や自由診療としても、いくつかのパネル検査が存在します。

  • Oncomine Focus/Comprehensive Assay
  • P5がんゲノムレポート
  • OncoPrime
  • MSK-IMPACT
  • Guardant 360
  • Myriad社
  • ACTmed社

など。

ただし、自由診療として検査を受けてしまうと、以後、そのがんに対して保険診療が受けられなくなる場合があります。主治医・担当医としっかりご相談ください。
(研究での検査を併用する場合は、この限りではありませんが、研究での結果を診療に使う場合にはその使用方法に注意が必要です)

終わりに

始まったばかりの検査で、様々な混乱や情報の錯綜が予想されます。

また、事実と異なる情報が出回る可能性もあります。

患者さんとそのご家族は、くれぐれも主治医・担当医と密にご相談してください。

できるだけ、出典の確かな情報を元にされることを勧めます。

以上です。

※状況に応じて、情報を更新する可能性があります。
※場合により、記事公開を中止する可能性があります。


脚注1:
C-CAT:がんゲノム情報管理センター国立がん研究センター内に設置されています)
がん遺伝子パネル検査で生成されたゲノムデータを集めるデータセンターの役割を担います。
リンク:がんゲノム情報管理センター


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